
Claude Code に /loop という機能が加わりました。指定した間隔でプロンプトを自動で再実行する、セッション内のスケジューラです。開発者の間では PR やビルドの監視に使われていますが、応用すれば「返信漏れの問い合わせ」「止まったままの承認」「動きの止まった案件」といった、人が見落としがちな業務の綻びを定期的に拾わせることができます。本記事では、その最小構成を1日で組む手順を、ターミナルの開き方から具体的に解説します。あわせて、よく出回っている「24時間働く AI 社員」という説明のどこが不正確かも、公式仕様に基づいて整理します。
/loop は Claude Code に組み込まれたタスクスケジューラです。利用には Claude Code v2.1.72 以降が必要です。バージョンは後述の手順で確認できます。
使い方は3通りあります。
/loop 30m <プロンプト> … 30分ごとなど、固定間隔で実行します。
/loop <プロンプト> … 間隔を指定しない場合、Claude が状況を見て毎回の待ち時間を1分〜1時間の範囲で決めます。動きがあるときは短く、静かなときは長くなります。
/loop(引数なし)… 組み込みの保守用プロンプト、または設定ファイルに書いた既定プロンプトが動きます。
ネット上には /loop を「24時間働く AI 社員」と紹介する記事がありますが、これは正確ではありません。公式ドキュメントが示す制約は以下のとおりです。
セッション内スコープ。ターミナルやセッションを閉じると停止します。再開コマンドで開き直したときだけ、未失効のタスクが復元されます。
マシンが起動し、セッションが開いている間だけ発火します。閉じている間は動きません。
定期タスクは作成から7日で自動失効します。最後に1回実行して自身を削除します。
取りこぼしの遡り実行はありません。Claude が長い処理中でその時刻を過ぎた場合、空いた瞬間に1回だけ実行されます。
つまり /loop は「自分が作業している時間帯に、裏で定期チェックを回す」ための機能です。本当に無人で24時間動かす用途には、後述する別の手段を使います。この区別を最初に理解しておくと、設計を誤りません。
正直に書きます。/loop はターミナルで動く開発者向けのツールです。とはいえ、難しいプログラミングは不要で、コマンドをコピーして貼り付けられれば動かせます。本記事は次のような方を想定しています。
ターミナルにコマンドを貼り付ける程度の操作には抵抗がない。
まずは小さく試して、自社業務に効くか見極めたい。
完成形は「要対応ブリーフィング」を定期生成するループです。見張らせた対象を一定間隔で確認し、人が対応すべき項目だけを日本語の箇条書きで報告させます。出力イメージは次のようなものです。
24時間以上更新されていない案件が2件あります。
本日が期限のファイルのうち、1件が未処理です。
直近1時間で追加された項目が1件あります。
該当がなければ「特になし」とだけ返します。これにより、同じ画面を何度も見に行く手間を、定期的な要約に置き換えます。返信や承認の放置は、そのまま失注や対応遅れにつながります。その「気づかなかった」を仕組みで減らすのが狙いです。
Anthropic の有料プラン(Claude Pro または Max など)、もしくは API クレジット。
macOS / Windows / Linux のいずれか。
作業時間の目安は30分から1時間。
ターミナルに強い抵抗がある場合は、Claude Code の Desktop アプリ(macOS / Windows)でも Claude Code を使えます。本記事のコマンドはターミナル向けですが、考え方は同じです。確実な無人運用に進む場合は、Desktop アプリの「スケジュールタスク」機能も選択肢になります(最終章で触れます)。
macOS: Command + Space でスポットライトを開き、「ターミナル」と入力して Enter。
Windows: スタートメニューで「PowerShell」と入力して Enter。
黒い(または青い)文字入力画面が出れば準備完了です。
Node.js のインストールが不要な「ネイティブインストーラー」を使います。下のコマンドを丸ごとコピーして貼り付け、Enter を押してください。
macOS / Linux の場合:
curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bashWindows(PowerShell)の場合:
irm https://claude.ai/install.ps1 | iex数十秒で完了します。
すでに Node.js(v18 以上)を使っている場合は、
npm install -g @anthropic-ai/claude-codeでもインストールできます。ただしsudoは付けないでください。権限の問題を招きます。
claude --version2.1.72 以上の数字が表示されれば /loop を使えます。これより古い場合は、再度インストールコマンドを実行して更新してください。
claude初回はログイン方法を聞かれます。ブラウザが開くので、有料プランに紐づいた Anthropic アカウントでログインし、接続を許可してください。ターミナルに戻れば準備完了です。
ループに「何を見るか」を与えます。ここでは2つの選択肢を示します。まず A で動かし、感覚をつかんでから B に進むのがおすすめです。
Claude Code は、起動したフォルダ内のファイルを追加接続なしで読めます。そこで、監視したい資料を1つのフォルダにまとめ、その中で Claude Code を起動します。
たとえばデスクトップに watch というフォルダを作り、受注の CSV や問い合わせのエクスポート、進行中案件のメモなどを入れておきます。そのうえで、一度 Claude Code を終了し、対象フォルダで起動し直します。
cd ~/Desktop/watch
claudeこれで、このフォルダの中身がループの監視対象になります。外部システムの接続が不要なので、その日のうちに最後まで試せます。
本当に価値が出るのは、メール、カレンダー、チャット、そして自社の CRM や受注・サポートのデータを直接見張らせたときです。これらは MCP サーバーやコネクタ経由で接続します。
claude mcp add <名前> <接続先>接続の詳細は対象システムごとに異なります。汎用のメールやカレンダーは比較的容易ですが、自社の基幹システムをループから安全に読み書きできるようにする部分は、MCP サーバーの用意・認証・権限設計が絡みます。ここが、社内に該当の仕組みがなければ専門の整備が必要になる箇所です。本記事ではまず A で進めます。
ループに実行させる指示文を決めます。コツは2つです。報告する観点を3つ程度に絞ること。そして「該当がなければ特になし」と明示することです。これで出力が安定し、読む負担も減ります。
Step 2 の A(フォルダ監視)に対応する指示文の例です。
このフォルダ内のファイルを確認し、次の3点だけを日本語の箇条書きで報告して。
1) 24時間以内に追加・更新されたファイル
2) ファイル名や内容から、今日中に対応が必要そうな項目
3) 先週から動きがなく、放置されている可能性がある項目
該当がなければ「特になし」とだけ書いて。余計な説明は不要。メールや案件管理につないだ場合(Step 2 の B)は、観点を業務に合わせて差し替えます。たとえば次のようになります。
接続済みのデータを確認し、次の3点だけを日本語の箇条書きで報告して。
1) 24時間以上返信していない顧客からのメッセージ
2) 本日が期限なのに未完了のタスク
3) 直近1時間で更新があった重要案件
該当がなければ「特になし」とだけ書いて。いきなり30分間隔にすると、ちゃんと動いているか分かりにくいので、最初は2分間隔で試します。Step 3 のプロンプトをそのまま続けて入力してください。
/loop 2m このフォルダ内のファイルを確認し、次の3点だけを…(Step 3 のプロンプト)起動すると、Claude が間隔を内部形式に変換し、ジョブの ID を表示します。数分待つと、あなたの操作の合間にブリーフィングが出始めます。
動作を確認できたら、いったん Esc キーで止め、実運用の間隔に設定し直します。30分ごとなら次のとおりです。
/loop 30m このフォルダ内のファイルを確認し、次の3点だけを…間隔の指定を省くと、Claude が状況に応じて待ち時間を自動調整します。動きが多いときは短く、静かなときは長くなります。
/loop このフォルダ内のファイルを確認し、次の3点だけを…読む: ブリーフィングは、あなたが入力していない手すきのタイミングで画面に出ます。
止める: 次の実行を待っている間に Esc を押すと、そのループは発火しなくなります。
管理する: 自然な日本語で指示できます。「いまどんな予定タスクがある?」で一覧、「このジョブを取り消して」で停止です。1つのセッションで最大50タスクまで保持できます。
これで最小構成は完成です。ここまでは1日かからず到達できます。
セッションを閉じると止まります。閉じている間のブリーフィングは出ません。再開は再開コマンド(claude --resume)です。
発火時刻には最大30分のずれが入る場合があります。サーバー集中を避けるための仕様です。正確な時刻が必要なら、毎時 :00 や :30 を避けて指定します。
7日で失効します。継続させたい場合は失効前に作り直すか、次章の常時運用の手段に移します。
取りこぼしは遡りません。厳密な実行保証が要る業務には向きません。
これらは欠陥ではなく、「作業中に回す軽量な監視」という設計上の前提です。用途を取り違えなければ問題になりません。
/loop は入り口です。「PC を開いていない時間も含めて確実に回したい」段階に進むと、別の手段が必要になります。Claude Code は公式に次の3つを用意しています。
Desktop スケジュールタスク … 自分のマシン上で動作。セッションを開いていなくても実行されます(マシンの起動は必要)。
Routines(クラウド) … Anthropic 管理のインフラ上で実行。マシンの起動もセッションも不要です。最小間隔は1時間です。
GitHub Actions … CI の schedule トリガーで動かします。
そして本質的な難所は、スケジュールの仕組みそのものではなく、自社の基幹システム(CRM、受注、在庫、サポート問い合わせ)を、ループが安全に読み書きできる形でつなぐ部分です。ここは MCP サーバーの設計、認証、権限設計が絡み、汎用コネクタだけでは届きません。逆に言えば、ここを自社業務に合わせて整備できれば、「見落としの自動検知」は単なるデモから、売上の取りこぼしを防ぐ実務ツールに変わります。
まずは Step 2 の A、追加設定なしのフォルダ監視から始めてください。半日で挙動の感覚がつかめます。そのうえで、自社のメールや案件管理、基幹システムにつなぎ、無人運用に乗せる段階で整備が必要になったら、MCP 連携と業務システム統合をご相談ください。
この商品について質問がありますか?コミュニティや専門家に質問してください。